本日(H19年12月19日)、県立西宮病院小児科部長 安部治郎先生の御高配により、JR西宮駅 西宮医療会館にて講演(60分間)をさせて頂きました。以下が御出席になった先生方にお配りした講演要旨です。

【西宮市小児科医会学術講演会(日医生涯教育講座認定)】

「片頭痛の診断と治療」 講演要旨
平成19年12月19日
樋口脳神経クリニック 樋口真秀


頭痛は一次性頭痛(機能性頭痛:命に差し支えることはないが、つらい頭痛)と二次性頭痛(症候性頭痛:命の危険がある疾患)に大別できる。前者の代表が片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛であり、後者の代表がクモ膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎である。我が国の頭痛診療は主に「脳神経外科」と「神経内科」が対応するが、病院など大規模な医療機関での対象は二次性頭痛に重点が置かれている。一方、医療側・患者側ともに一次性頭痛に対する理解は今なお不十分であるため、診断・治療体制の充実と患者啓蒙が望まれる。
  一次性頭痛のうちでも、片頭痛はQOL(生活の質)への影響が大きい上に、15歳以上の日本国民における有病率が8.4%(男性3.6%、女性13.0%、女性/男性比は3.6)にのぼる重要な疾患である。複数の調査により、頭痛を訴えて頭痛専門外来を受診する原因疾患の大部分は片頭痛であることが判明している。これは小児の頭痛に関しても同様である。欧米の報告によると小児片頭痛の罹患率は、7歳時において2.5~3%で男女差を認めないが、月経発来による女性ホルモンの関与により思春期の14歳時では男児で約6%、女児で約13%と性差が拡大する。我が国においても、片頭痛の過半数は20歳以前に初発しており、しかも15歳以下の義務教育就学齢での初発は35%以上である。このことから、片頭痛は小児科領域においても重要疾患であると言える。なお小児片頭痛の約半数のみが成人後も片頭痛を有する。
小児片頭痛では家族歴が70~80%と高頻度に認められる。特に母親からの遺伝が多いため、小児片頭痛では母親も片頭痛を有することが多い。従って訴えの曖昧な小児頭痛患者の診断に際しては、同伴して来院した母親自身にも片頭痛に関する問診を行なうと患児への診断能率が上がる。
  成人の場合と同様に、小児片頭痛の診断に際しても基本的には明確な診断基準に従う必要がある。国際頭痛分類第2版(ICHD-Ⅱ:2004年)では、片頭痛の持続時間の基準の短縮(1~72時間、すなわち持続時間が短い傾向にある:成人は4~72時間)と頭痛の部位(両側性[前頭/側頭]あるいは片側性、すなわち左右差が不明確:成人では片側性)の2点が成人の診断基準と異なる。さらに小児片頭痛の臨床的特徴として、①腹痛、嘔吐や下痢などの腹部症状が重症かつ前面に出やすい、②朝に発症しやすい、③睡眠との関連が強い、④乗り物酔いが多い、⑤夢遊病(夢中遊行症)が多い、⑥前兆のある片頭痛では視覚異常(変視症、小視症、大視症)が高頻度にみられる、⑦学校生活との関連が強い、などがあげられる。⑧また成人同様に「不安・うつ」の合併も多い。さらに10歳以下の場合は、⑨顔面蒼白になり羞明感を訴え、錯乱状態の様相を呈して周囲が翻弄されることもある。小児片頭痛において特に重要なことは⑩「起立性調節障害」を高頻度に合併することで、上記の②と⑦とも相まって「不登校」の大きな原因となる。「不登校児」といった誤解の目で見られることから、「社会的・精神的な負担が加わり片頭痛がさらに悪化する」と言う悪循環に陥らないよう、家族・教師・医師たちの理解が必要である。









脳神経外科(脳外科)・神経内科・頭痛外来の樋口脳神経クリニックには、兵庫県の阪神間 (西宮、芦屋、尼崎、宝塚、伊丹、川西)、神戸市や大阪府下の広範囲から患者さんが受診されます。主な対象疾患は、頭痛、特に片頭痛 (偏頭痛)、緊張型頭痛 (筋収縮性頭痛、筋緊張性頭痛)、群発頭痛です。さらに、高血圧の治療、脳卒中 (脳梗塞、脳出血)の予防に対応します。院長の樋口真秀は大阪大学医学部を卒業した「脳神経外科の専門医」であり、日本頭痛学会より認定された「頭痛専門医」です。