喫煙は、就寝中のニコチン離脱症状のために睡眠の質を低下させる可能性が示唆されました。[出展:米国胸部専門医学会の雑誌『Chest』2008年2月号]

背景・目的:喫煙と医学的疾患に関して、ありとあらゆる論文が存在するにもかかわらず、喫煙と脳波(EEG)活動に関する研究はほとんどなされていません。以前の試験では、睡眠パターンの変化が喫煙自体によるものか、それとも喫煙の影に潜んだ医学的疾患(心疾患、呼吸器疾患等)によるものかは明らかではありませんでした。喫煙者に不眠の愁訴が多い傾向があることは、従来より知られており、喫煙者は就眠および睡眠の維持に苦労しています。喫煙者は安らかな睡眠が得られておらず、このことが喫煙者自身に日常的に悪影響を及ぼします。喫煙者には疲労感があり、翌日に疲れが残り、注意力低下を来たす可能性が高いのです。本試験は、喫煙が睡眠に及ぼす影響を明らかにした最初の試験です。
方法:本試験は、大規模な睡眠呼吸障害および心血管系疾患に関する多施設共同試験であるSleep Heart Health Studyの一部でした。この大規模試験の対象となった6400例以上の被験者のうち、1日20本以上のたばこを吸い、基礎疾患がなく、他の基準を満たした喫煙者は40例のみでした。本試験では、これらの被験者と、年齢、性別、肥満度指数(BMI)、人種を一致させた40例の非喫煙者が比較されました。
①睡眠構築を評価するため、本試験では従来のEEGパターンの視覚的分類ならびに脳波周波数の数学的分析を利用する睡眠時EEGの高度なスペクトル分析が実施されました。研究者らは、40組の対応するペアにおいて、自宅での一晩の睡眠パターンを検討しました。
②被験者に睡眠をモニターした翌日の睡眠について被験者に質問しました。
③被験者にカフェイン・アルコールの摂取について質問し、様々なツールを用いて精神衛生を評価しました。
結果:①喫煙者と非喫煙者の間で、視覚的スコアに差は認められませんでしたが、脳波活動のスペクトル分析から、喫煙者では非喫煙者と比べて平均的にα波の割合が高く(15.6% vs 12.5%)、δ波の割合が低い(59.7% vs 62.6%)ことが明らかになりました。このことはすなわち、喫煙者では対応する非喫煙者に比べて、浅い睡眠の時間が長く、深い睡眠の時間が短いこということです。喫煙者と非喫煙者の睡眠時EEGの相違には時間依存性が認められ、最大の差は睡眠時間の初期に認められました。
②非喫煙者の5.0%および喫煙者の22.5%が安らかな睡眠の欠如を報告しました。喫煙者では非喫煙者に比べて、ほぼ4:1の割合で夜間睡眠後の気分についての愁訴が多くなりました。さらに、α波の割合が高い(すなわち、睡眠が浅かい)被験者は、睡眠を安らかと感じる割合が最も低い傾向がありました。
③自己申告によるアルコール摂取は両群とも同様であり、精神衛生状態も同様でした。喫煙者の方がカフェインを日常的に摂取している割合が高かったのですが、このことはEEGパワースペクトル分析の結果に関連がありませんでした。
考察:ニコチンはドパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、アセチルコリン(すべて覚醒状態に関連がある)の放出を刺激し、喫煙者の血中ニコチン濃度は就寝時に最も高いことは、本試験で喫煙者と非喫煙者の睡眠時EEGの最大の相違が睡眠時間の初期に認められたことに一致します。さらにニコチンの半減期が約2時間であることを考慮すると、一晩中続く軽微なニコチン離脱症状が睡眠時間後半の睡眠構築にさらなる影響を及ぼしている可能性があります。喫煙者は不眠の愁訴が多く、安らかな睡眠が得られていないため、常に疲労感があり、注意力低下を来たす可能性が高いことは、喫煙による質の悪い睡眠が日常生活に及ぼす直接的影響と考えられます。
結論:予防衛生の見地から、睡眠障害を喫煙に関連した一連の問題に加えることが非常に重要であり、喫煙者を納得させて禁煙させるための動機付けとなる1つの要因となりえます。本試験は、喫煙が年齢、性別、人種、身体測定値、カフェイン・アルコール摂取、併発疾患、精神衛生状態とは無関係に睡眠構築を変化させる可能性があることを示しています。 本試験の結果から、離脱症状を避けることが可能な方法でニコチン補充療法を各人に合わせて調整することで、喫煙者向けの睡眠補助薬の開発に拍車をかける可能性があります。









脳神経外科(脳外科)・神経内科・頭痛外来の樋口脳神経クリニックには、兵庫県の阪神間 (西宮、芦屋、尼崎、宝塚、伊丹、川西)、神戸市や大阪府下の広範囲から患者さんが受診されます。主な対象疾患は、頭痛、特に片頭痛 (偏頭痛)、緊張型頭痛 (筋収縮性頭痛、筋緊張性頭痛)、群発頭痛です。さらに、高血圧の治療、脳卒中 (脳梗塞、脳出血)の予防に対応します。院長の樋口真秀は大阪大学医学部を卒業した「脳神経外科の専門医」であり、日本頭痛学会より認定された「頭痛専門医」です。